ユーザーインタフェース構築の道のりー調査に基づき船員を中心とした設計をー

AQ株式会社は、状況認識システム(AS)を市場に出すためにグローク社と連携している、デザイン、調査、開発を手掛ける企業です。今回は、AQ社の共同設立者である長瀬映子氏とユーザーエクスペリエンス(UX)リードのエミリー・ローブ氏に、船員が安全に航海するために必要なあらゆる情報を提供するユーザーインターフェース(UI)の開発にあたって、どのようにグローク社と連携しているかを伺いました。

AQ社がグローク社と共に足元取り組んでいるのは、グローク社のAs Proで使用される予定の初期UIです。ローブ氏はUIの仕組みについてこう説明します。

「AS Proは、センサーフュージョンシステムがレーダー、AIS、カメラなど、さまざまな情報源から取り込むすべての情報を、船員がより実際の状況に基づいた適切な判断を下せるように変換します。」

AQ社の現場調査では、船の位置(例えば、外洋と港内)によって、操船中の周囲の状況に対する船員の考え方が変わることが明らかになりました。そこで、自船の状況に合わせた複数のUIの種類を提供することにしました。グローク社はこうしたAQ社の調査に基づき、船員がどんな情報を求めているかを理解した上で開発を行っていることから、AQ社は重要な役割を担っています。

「最初のステップは、実際の製品を設計する前に行う基礎調査です。船を訪れ、船長や船員と会話をし、面談を行い、ブリッジで何をしているかを観察しました。船に泊まり込んで夜間運航する様子を見たり、どのように船員間でコミュニケーションを取っているのか、どんな情報のやりとりをしているのかを確認したりしました」と長瀬氏は説明します。

入港する船のブリッジで基礎調査を行うAQ社の研究者 (画像提供:AQ社)

効果的にデータを活用するために多くの専門家と協力した上で、AQ社はグローク社と共にPOCシステム(概念を実証するためのシステム)を作成し、船員に実際に見てもらい、何が上手く機能していて、何を改善する必要があるかを検証しました。そして今も、AQ社では継続的に船員とやり取りをすることで有意義なフィードバックを得ています。

こうして現場に寄り添いながらUIを常に進化させ、改良してきたAQ社/グローク社の継続的な取り組みこそが、ASをユーザーにとって使い勝手の良いシステムとする鍵となっています。ここまで来るのは平坦な道のりではありませんでした。

「私たちは設計の観点から、どんな状況下でも船員にとって使いやすく見やすいこと、将来も使い続けられること、プラットフォームに依存しないこと、精度が高いことを目指した製品開発を続けたいと考えています。ブリッジは、夜間はとても暗く、日中はとても明るいため、UI画面の明るさのバランスをとるのが難しいということが一つの課題でした。その他にも、センサーフュージョンシステムとの連携はとても複雑でしたが、ユーザーが必要としているものをUIに表示するために正しく理解できる様努めました」とローブ氏は説明します。

グローク社とのASの開発に、AQ社のスタッフは情熱を注いでいます。

「AQは、人々の生活をより良いものにしたいと思っており、ASはその観点で正しく私たちが取り組みたいと思っている製品です。この製品のおかげで、自分たちが世界のために良いことをしている気持ちになれるのです」とローブ氏は述べました。

それに加えて、長瀬氏はリサーチャーとしての自身の観点を話してくれました。

「船員や船長とは長期間にわたって、密に会話を重ねてきました。基礎調査から始まり、試作品を作り始めてからは、2ヶ月に1度以上のペースです。試作品を見てもらい、彼らがどう思うか感想や意見を集め、アイデアを持ち帰って試作品を改良しました。かなりの労力を費やしましたが、船長や船員の方に積極的にご協力を頂き、プロジェクトに取り込むことができて本当に良かったです。」

ユーザジャーニーマップは、研究作業において重要な役割を果たし、システム開発者が航海のさまざまな段階で船内で実際に起こる現象を理解するのに役立ちます。 (画像提供:AQ社)

インタビューの最後に、長瀬氏はグローク社と一緒に働くことはとても充実して楽しいと話してくれました。これまでに行ってきた様々なパートナーとのインタビューの中でも、これは何度か触れられてきました。

「私たちは、グロークの単なる下請けなのではなく、グロークと一緒にこの製品を作っているのです。」

この言葉は、グローク社の特徴を表しているとも言えます。グローク社は、大学教授からUXのリサーチャーまで、すべてのパートナーが同じチームの一員であり、すべての人にとって海をより安全な場所にするという目標を持つチームであると感じられるよう、懸命に取り組んでいるのです。

グローク会員制ニュースレター2021年7月号掲載記事


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