インタビュー:<前編>画像認識を用いた状況認識技術における研究開発の最先端で 東京海洋大学清水教授

グローク・テクノロジーズは研究開発に一切の妥協を許しません。今月は、可能なかぎり安全かつ正確な技術を活用したシステムを構築するという目標に向けて、当社が共同研究を行っている研究者のお一人をご紹介します。

東京海洋大学 清水悦郎教授

清水悦郎教授は、1999年に東京工業大学にて制御工学で博士号の学位を取得されました。現在は制御理論、水中ロボット、自動運航船を中心に研究されています。研究者として理論を重要視しながらも、研究を実社会にとって真に意味あるものにするためには、その理論だけに捕らわれず実際に試してみる必要があると言います。それが、教授がグローク社と協力関係を築いている理由でもあります。

清水教授に、グローク社の状況認識システムが航行支援においていかに大きな役割を果たすのかをご説明いただきました。

「船舶では、既にオートパイロットや航路追従などの自動制御技術が搭載されています。しかしながら、これらの技術はあらかじめ人間が様々な条件を考慮した上で判断を下し、進むべき航路等の指示を人間が出しているからこそ機能しているのです。自動制御システムはそれらの指示に従っているにすぎません。」

「しかし、本当の意味での自動航行を実現したいのであれば、現在人間が行っている障害物を避けるというような判断を、システムがしなければなりません。現在私は、この「判断」の過程をどのように自動化するかという課題についてグローク社と共同で研究を行っています。」

清水教授は、船舶がすぐに自動化されることはなく、先ずはあくまでも人間の支援を行うものとなるだろうと言います。

「第一段階では、乗組員が日頃の業務の中でシステムを使うことになります。このシステムは、ブリッジの乗組員に対して乗組員の判断が必要となる段階で警告します。例えば、ここに障害物がある、あそこから船が向かってきている、このため針路を変える必要があります、といった具合です。」

正確性の向上とともに乗組員は徐々に船の運転をシステムだけに任せることができるようになり、最終的に真の自動運航が実現するだろう、と清水教授は言います。しかしながら、現時点では判断を行う前提となる障害物を正確に検知・識別し、それを乗組員に伝えることができる状況認識システムは存在しません。それが、教授がグローク社との共同研究を開始したきっかけだったのです。

「状況認識システムは、遭遇する様々な種類の物体を見分けなければなりません。今のところ、ある障害物を避ける必要があるのかどうか、その物体に対して注意を払う必要があるのかどうか、といったことを判断できるシステムは存在しません。初めてグローク社と出会った時、私の研究室ではまさにそうした認識・評価技術について研究を行っていました。グローク社が我々と同じ目標を共有していることを知り、共に解決策を見つけるために共同研究を開始したのです。」

清水教授は、グローク社と協力して安全かつ正確な状況認識システムを構築する上で既存の機器類はまだ十分ではないと考えています。例えば、船に搭載されているAISから提供される情報では不十分である、というものです。

「もし必要とするすべての情報をAISが提供してくれるのであれば話は別ですが、実際は多くの情報が欠けています。まず、現在の規則では大型船舶にのみAISの搭載が義務づけられています。ですので、漁船やプレジャーボートといった船には搭載されていません。すべての船舶にAISの搭載を義務づけるよう規則を変更するという話が海外でありますが、例えすべての船にAISが導入されたとしても、通信容量の問題もあり、真の自動運航に必要となる全ての情報を吸い上げるのは難しいでしょう。」

清水教授はAIS情報を含めたアノテーションと呼ばれるプロセスを改めて実施しました。アノテーションでは、データをタグ付けすることで、AIが物体を識別する様にするものですが、アノテーションをすると、AISの情報と動画・写真データに表示される位置がずれていることがままあります。この不正確さからも、AISの情報を完全に信頼することはできない、と教授は考えています。

「また、漁船が使用する漁網や浮きにはAISが付いてないため、それらを認知することもできません。そのような小さな物体はレーダーでも認識されないため、カメラなどの手段を用いて探す必要があります。」

清水教授は、真の自動運航について語る前に、まずAISやレーダー、乗組員が現在使用しているその他ツールの不足を補うことができるようなシステムを構築する必要性を解きます。それがまさにグローク社が取り組んでいることなのです。

(次回に続く。後編はこちら。)

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