インタビュー :<後編>国境を超えた産学連携の先に 東京海洋大学清水教授

東京海洋大学の清水悦郎教授は、日本の海事産業での状況認識システムの展開を図るグローク社と、システム開発の為の共同研究を行っています。状況認識システムは、漁師人口の多さをはじめとした日本の海域における特殊かつ複合的な課題に対応できるものである必要があると、清水教授は言います。

東京海洋大学 清水悦郎教授

「漁業権を持った漁師は、許可された海域内であれば好きな場所に漁具を設置できます。定置網であればある程度設置場所は特定されていますが、例えばタコ漁のタコツボの場合は、そこに仕掛けが入っていることを知らせる三角の旗が付いた竹竿を、水面から出すだけの仕組みになっています。このような漁具を避けることは容易ではありません。日本では多くの漁法が使われているため、水中の漁具も、漁船も、諸外国より多く存在します。」

グローク社の状況認識システムは利点のひとつに、こうした日本の周辺海域での膨大な数の漁船とその漁具を、検知・識別できる大型船舶向けのシステムであることが挙げられます。

清水教授は、解決すべき課題はまだ他にもあるとも指摘します。カメラは、船舶の航行灯と水面に反射する太陽光や信号灯を識別できなくてはなりません。さらには、東京など高度に都市化の進んだ地域では、建物自体も水面に反射してシステムを混乱させる可能性があるのです。

清水教授はグローク社へ提案するため新しく、小型船舶の安全性を向上させるためのアイディアも考えていると言います。

「大型船舶の航跡に入ると、全長10メートル前後の漁船や小型船舶は激しい揺れに見舞われます。このような現象を検知・識別して、小型船舶が航路を変更して避けられるようなシステムとしなくてはなりません。私の研究室ではこの問題について研究しているのですが、プロジェクトの次のステップとしてこの問題を取り入れるようグローク社へ提案するつもりです。大型船舶ではさほど問題にはならないため、特に小型船舶を対象とするものになります。」

清水教授が、新たなアイディアを提供することに協力的なのは、教授がグローク社に敬意を払っていることの表れでもあります。

「グローク社は非常にスピード感があり、開発能力も非常に高いです。非常にスピード感をもって取り組んでいらっしゃるので、私自身も非常に楽しみながら共同研究に取り組んでいます。AIを駆使する会社もありますが、現状、船舶運航に関する知識は不十分と感じることが多々あります。一方、グローク社の方々は、船舶運航に関してしっかりと調査して取り組んでいると感じています。調査されている内容も深く、私たちが解決すべきと考えるような課題についても、ほとんど同様の考え方を持っています。船舶運航に関して深く理解している印象を受けます。」

清水教授とその研究室は、海事産業の企業との共同研究から多くのものを得ています。  

「私たちが見据えているものは直ぐに開発すべきものばかりなのですが、大学の研究室としてできることには限界があります。それは、学生の能力の問題などではなく、むしろ毎年学生が入れ替わるがために、研究の継続性を保つのが難しいことによるものです。」

研究機関は民間企業と連携することで、ビジネスとして企業が成功を収めるとともに、継続的に知識が蓄積されるようになる、と清水教授は考えています。

さらに清水教授は、大学研究者としては、研究の大半は学会で他の研究者に成果を発表するためのものとなり、実際の現場で求められる機能との乖離が大きくなっているのではないかと感じている、とも言います。だからこそ、市場に出す製品を作っている企業に対して実際に協力できることに、大きな意味を感じているのです。

商品化が最終目標であることが、清水教授の研究への興味を掻き立てていますが、グローク社と共同研究を行うことには、他にも理由があります。

「今のグローク社には素晴らしいところが多くありますが、今後の開発計画も含めて考えると、海洋でのAIによる障害物検知の分野ではグローク社がナンバーワンになるだろうと思っています。グローク社も日本に目を向けてくれているので、その技術を日本で活用するとともに、国際共同研究だからこそ初めから世界展開を視野にいれた製品にしたいと思っています。」と清水教授は言います。

清水教授は、グローク社が研究室との共同研究に相応のメリットを見出してくれるだろうとも、期待しています。

「学問の世界にいる限りは、常に他の誰よりも一歩先を行くアイディアを出し続けなくてはなりません。グローク社の誰もが思いつかないアイディアを、共同研究に提示することを目標にしています。」

世代の違いも大学の持つ大事な要素だと、教授は考えています。

「時代は常に変遷しています。研究室には常に若者がおり、彼らは情報に対してどこか私の世代とは異なる感性を持っています。次世代をけん引する若者の意見を取り入れることのできる場として、新鮮な感性を使ったアイディアを提供することで、グローク社を支援できればと思います。」

グローク会員制ニュースレター2021年4月号掲載記事

本記事はインタビューの後半となります。前半はこちらから。

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