自律運航技術開発企業に出資 三菱商事船舶の次世代技術を推進

三菱商事はこのほど、フィンランドの自律運航技術開発会社であるグローク・テクノロジーズ(Groke Technologies)に出資した。両社は運航時の監視業務における船員のストレス低減、安全性向上につながる状況認識システム、運航支援システムを順次開発し、日本の内航船などに展開していく予定。三菱商事は船舶の次世代技術の分野に注目しており、今回の自律運航技術のほか、電気推進船の開発・普及を手掛けるe5ラボへの出資を通じて次世代内航船の普及を図る取り組みも進めている。「自律運航」と「電化」の技術は親和性が高いとされ、両事業のシナジー効果も視野に入れる。

 グローク・テクノロジーズは自律運航技術開発の先駆者であるロールスロイスのシップインテリジェンスチーム出身の4人が創業者となり2019年に設立された。CEOはユハ・ロッカ氏、副社長はイーロ・リンドバーグ氏。従業員は8人。

 三菱商事とグローク・テクノロジーズは現在共同で日本とフィンランドを主要開発拠点として技術開発を実施し、顧客に提供可能な複数のソリューションの比較・検証を行っている。カスタマーソリューション担当のリンドバーグ副社長は「周囲の船舶や危険物の感知は、船種によらずどの船舶においても課題のため、船員と共に周囲の状況を監視するシステムを開発している。最も困難な運航環境下においても正確な情報を提供し、安全運航に寄与できる付加価値の提供を目指す」と語る。

 グローク・テクノロジーズは自律航行関連技術に関する豊富な知識を備えているほか、フィンランドや日本のみならず世界各地のデジタル企業や人工知能開発企業との協業を通じてIT分野における強力な業界横断的なコネクションや強みを持ち、これを事業展開に積極的に生かしているという。

 ロッカCEOは「日本には長年にわたり培われてきた強力な海事クラスターが存在しており、日本が自律運航技術のイノベーションリーダーになり得る可能性は十分に認識している。三菱商事との強力な協業により、まずは最初の製品として、状況認識システムを提供したい。他社との協業の機会に関しても前向きに考えており、自律運航化も中長期的に視野に入れた最先端技術の共同開発・商業化、日本の内航船への円滑な導入を支援し、より安全で働きやすい職場環境創出に寄与したい」としている。

 海事産業では、これまで以上にデジタルや環境分野での新技術の導入・開発が重要視されつつある。その中で、商社が先端技術を国内外につなぐ機能や、事業投資などを通じて技術開発を側面支援するような役割が増えてきている。

 三菱商事は今回の出資により、船舶の次世代技術として注目される「自律運航」と「電化」をカバーした。電化については、ゼロエミッション電気推進船(EV船)の開発・普及を進める「e5プロジェクト」に参画しており、旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井とEV船の企画・開発、普及活動、知的財産権管理を担う共同出資会社「e5ラボ」を昨年立ち上げた。同プロジェクトは環境問題、少子高齢化、内航船員不足といった課題を解決し、持続可能な内航海運や社会インフラ変革を目指している。今年に入り、出光興産、東京海上日動火災保険、東京電力エナジーパートナーを加えた計7社による「e5コンソーシアム」も結成した。船舶の電化のためのインフラ整備も含めてEV船の具体化が進められている。

※写真:グローク・テクノロジーズの創業メンバー。左から、イーロ・リンドバーグ氏、メルヴィ・ピットカネン氏、ユハ・ロッカ氏、マリアリーサ・ライホネン氏 ※画像:グローク・テクノロジーズのロゴ

« Back