インタビュー:⾃律運航の今後について 副社長 イーロ・リンドバーグ氏

イーロ・リンドバーグ副社⻑に会社の概要、⾃律運航の今後などについて聞きました。

――会社概要は。

「当社は、⽇本の内航船乗組員の乗船中におけるストレスを軽減し、どんな環境下でも、乗組員に安⼼してもらうための技術(ソリューション)を開発している。本社はフィンランドのトゥルク市に置いているが、⽇本市場を最重視しており、東京でも活発にわれわれの技術をアピールしている。当社創業者はロールスロイス⾃律運航船舶技術開発研究センター出⾝で、ロールスロイス時代には、世界初の遠隔操作船や衝突回避機能を備えた完全⾃律型船のデモを⾏った」

グローク・テクノロジーズ副社長
イーロ・リンドバーグ氏

  • ビジョンが⼀致

――⽇本企業の中でなぜ三菱商事の出資を受け⼊れたのか。

「ロールスロイス時代から三菱商事とは友好的な関係を築いており、⾃律運航技術に関する将来のビジョンが⼀致していた。そのため、グローク・テクノロジーズを⽴ち上げるに当たり、当社への出資や提携に関⼼があるかどうか真っ先に三菱商事にアプローチを掛け、会社設⽴以来、⼆⼈三脚で事業を進めている」

――⾃動運航船の研究開発計画が相次ぐが、欧州の動きは⽇本より進んでいると思うか。

「これらは地域による差はあまりないと思う。開始した時期が異なるため、現在の状況には当然多少の違いがあるが、ほぼ全てのプログラムが同じ最終目標を持っていると⾔える」

「例えば『いかに衝突回避するのか』という課題に着目している点はほぼ共通している。規制に焦点を当てているプログラムも多く、国際海事機関(IMO)とそのMASS(⾃律運航船)ワーキンググループに貴重なフィードバックが提供されている」

「これまでのところ、デンマークで初の遠隔操作タグボート『Svitzer Hermod』や、フィンランド初の完全⾃律運航フェリー『Falco』など、世界初のデモは欧州で実施されてきたが、世界各地で多くのデモが近々予定されており、グローバルに⾒ると⼤きな差はないと考える」

「⽇本でも、⽇本財団の『MEGURI  2040』プロジェクトで注目されている『DFFAS』など、非常に興味深い開発プログラムが進⾏している。最終的な⾃律運航船は電気推進船との親和性が⾼いため、この点でe5ラボなどの電気推進船プログラムの進展も楽しみだ」

  • 注意喚起システム

――三菱商事と共同で⽇本とフィンランドで現在開発している「状況認識システム」はどんなものか。

「船の周囲の状況を監視し、⾒張りをしている乗組員や船⻑に危険を知らせるための注意喚起システムとなる。乗組員と新しい技術が、あたかも⼀緒に操船作業を⾏っているかのようなシステムを目指しており、乗組員にとって魅⼒的で使いやすい次世代のツールだ。このシステムは必ずや乗組員の負担を軽減し、安全と安⼼をもたらすことになるだろう」

「われわれのシステムの裏にある技術は、センサーフュージョンと呼ばれるもので、さまざまなセンサーからの情報を組み合わせ、その情報をユーザーが使いやすく⾒やすい形で表示する。顧客ニーズに基づいたユーザーフレンドリーなシステムを構築するために、われわれは、ユーザーとなる、⽇本の内航船乗組員へのヒアリングに非常に多くの時間を費やし、システムの有効性を検証してきた。もちろん、ユーザーインターフェースは⽇本語だ」

「われわれのシステムは、視界の悪い環境下でも視認性に優れたカメラシステムを主な情報源としている。カメラから取り⼊れた画像情報には、AIS(船舶⾃動識別装置)データに 加えて、レーダーのデータを統合することも可能。当社の製品は、他の船内機器との接続が不要なので、船舶へのレトロフィット(既存船への搭載⼯事)が簡単に⾏える。⼀⽅、他社製機器との連携や活⽤も視野に⼊れている」

「現在、当社の製品以外の状況認識システムは、主にレーダー情報とAISに基づいて障害物やリスクの検出を⾏っているが、当社の製品は画像認識に基づいた検出をしている。画像認識の裏では⼈⼯知能(AI)による機械学習を利⽤しており、カメラが捕らえた障害物を検出し、識別することができるため、レーダーだけに基づいたシステムと⽐較して、より正確なリスク評価ができる」

「⽇本の海域で、機械学習に必要とされる『教師データ』を⼤量に収集し、AISを付けていない漁船や⽇本特有の障害物などをも検出・識別できるようにしている。このデータ収集は、さまざまな⽇本の内航船舶にデータ収集ユニットを設置して、既に1年近く実施している。内航船員からの評価では、多くの貴重なフィードバックが寄せられ、われわれの製品に関するアイデアもいろいろと⽣まれている」

  • 乗船ストレス軽減

――⾃律運航技術で海事産業はどう変わると思うか。

「⾃律運航技術は、まずは船上の乗組員を効果的にサポートすることになる。われわれの認識システムの目標は、技術と乗組員とが調和し、この新しい技術によって、乗組員が多⼤なストレスから解放されること。乗組員は、データやテクノロジーを⽤いてより正しい判断を下すことができるようになる」

「今は乗組員をサポートするために、船舶の⾃動化がかつてないスピードで進んでいる。個⼈的には、次のステージでは外洋での⾒張りなど、乗組員の作業の⼀部は新しいテクノロジーに取って代わられると思う」

「この⼿法は現在、『ピリオディカリー・アンマンド・ブリッジ』(⼀時的な無⼈ブリッジ)と呼ばれている。テクノロジーによって乗組員の休憩時間を増やすことができ、操船が必要な場合には、機械が代わりに⾏うか、複数の船舶を同時に制御できる陸上のコントロールセンターによって⾏われるようなシステムだ。もちろん、制約はあるが、完全⾃律船のために開発された技術が有⼈船でも活⽤される良い例だと⾔える」

「さらにその先は、恐らく乗組員に衝突回避のガイダンスを提供するソリューションができ、その技術が徐々に確⽴されると、船の制御は機械に任され、乗組員の役割はモニターを監視することになる。乗組員の出番は狭⽔路、港湾内など、⾼い操船技術が求められる状況だけになる。完全⾃律の外航貨物船の登場はまだ先だと思うが、バージ、巡視船、短距離 フェリーなどでは、もう少し早く現実化するかもしれない」

  • ⽇本市場に注⼒

――⽇本市場に期待することは何か。

「⽇本市場は非常に魅⼒的な市場であり、多くの企業が⼤変興味深い技術開発に取り組んでいるが、われわれにもチャンスはあると考えている。将来はグローバル市場にも展開していきたいと考えているが、当⾯は⽇本国内市場だけをターゲットとしており、⽇本の乗組員のニーズに対応したソリューション提供に注⼒していく」

「⽇本での調査を通じて、欧州と⽇本の違いをはじめとした非常に興味深い多くのことを発⾒した。われわれのテクノロジーを普及させることで、⽇本の海運業界のさらなるレベルアップに貢献したい」

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